新宿区高田馬場の司法書士 森住都です。
今回は、遺産分割協議書についての質問です。
質問:69歳女性です。母が先月亡くなりました。父は既に他界。相続人は、私と弟(65)の2人
です。
私、弟とも結婚してそれぞれ子どもがいます。
母の遺産は母が一人で住んでいた土地と建物だけです。遺言書はありません。
私と弟は昔から仲が良く、母の持っていた土地と建物を私の名義にしようということも直ぐ
に決まりました。
特に争いになっていないし、遺産分割協議書は作る必要ないですか?
回答
気の知れている兄弟など、話せばわかる間柄であれば、特に格式張って遺産分割協議書などの書面を作る必要はないとのお考えですね。その気持ちも分かります。
お母様の相続人は、相談者様(仮に「A子さん」といいます。)と弟さんの2人です。そして、その2人はそれぞれ2分の1ずつ法定相続分を取得します。(民法900条)
遺産分割は、書面を作成しなければ協議が成立しない訳ではありません。話し合いだけでも成立します。
しかし、法定相続分どおりでなく、A子さん一人のものに不動産の名義を変更するには、遺産分割協議書が必要な書類になりますので、この点から遺産分割協議書を作成する必要があります。
また、お母様の遺産が相続税の申告の対象である場合、税務署の相続税の申告の際に遺産分割協議書が必要になります。
その他、兄弟間で遺産を全てA子さんにしましょうと話し合ったにもかかわらず、遺産分割協議書を作成しないまま、弟さんが突然不慮の事故でお亡くなりになった場合、兄弟間の話し合いを証明するものがなくなってしまいます。
弟さんの相続人は、弟さんの奥様や子どもさんになりますので、お母様の不動産の名義を書き換える時には、奥様や子どもさんの協力が必要になってきます。
弟さんとは円満な関係であってもその奥さんや子どもさんと当然に円満に話し合いが出来るでしょうか。
他のパターンでも、遺産分割協議書を長らく作成しないまま弟さんが認知症などによって判断能力が低下した場合も考えられます。
その時に、お母さんの不動産の名義を書き換える時には、弟さんに成年後見人を就任させて、その成年後見人と話し合う必要があります。
実際は、A子さんがお母様の不動産を全て相続することはかなり難しくなってしまいます。
そのようなことがないように、なるべく早めに遺産分割協議書を作成し、不動産などの名義変更も早めに済ませておくことをお勧めします。
相続登記をいつまでにやらなければならないなどの期限はございませんが、そのままにしておくと新たな問題が生じるおそれがあるために、早めの手続きをおすすめします。